株式会社北村商店 | 愛知県名古屋市

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円の価値

2024.07.12

梅雨明け宣言を待たず我慢が出来ないほどの熱い夏が始まりました。
全国では40度になる地域もいくつかあるなか、熱中症で搬送される方も多く
外向時には十分な暑さ対策を心がけたいと思います。

我慢できないと言えば、我々輸入業者にとって今一番しんどいのが激しい円安です。
2022年3月に始まった急激な円安の流れは、揺り戻しを挟みながらも
勢いを緩めることなく進行し、今では160円を超えてしまいました。

ただ、海外の商品を輸入するにあたり、単純にドル円レートだけに注目していても、
現在の度重なる値上がりが理解し辛いかもしれません。
ドル円レートに加え意識したい数値は、あまり聞き馴染みのない『実質実効為替』です。

日々耳にする為替レートは専門的には名目為替と言い、
1ドル紙幣を日本円に両替する場合、今なら160円が必要となる事を表す数値です。

しかし当社が購入するのは紙幣でなく缶詰等の商品であり、
かつ、相手国は中国やタイ・南アフリカなどアメリカ以外の国となります。。
商品には当然現地での製造に係るコスト(人件費や燃料・包材など)が発生し、
そのコストは製造する国の物価≒インフレ率による影響を受けます。

この対外的なインフレ率の差を勘案して通貨の購買力を数値化したものが実質実効為替です。

       名目レート   実効レート
 
  1980年    249円      106.33   JAPAN AS No.1の時代
  1995年    94円      193.97   バブル崩壊後(実効最高値)
  2008年    100円      137    リーマンショック
  2011年      88円      128.53   東北大震災
  2024年    160円       68.65    現在

  本年5月、日本円の実質実効為替レートは68・65となり、過去最低を記録
  これは1ドル=360円の固定相場制だった1970年代前半よりも低い水準

この実効レートの捉え方としては、例えば世界平均水準の経済国からコーヒー豆を買う場合、
100円固定で支払いすると何グラム豆を買えるか?で考えてみます。
1980年なら106g、95年なら193g、2024年なら68g、といった感じで理解してください。
同じ100円で買える豆のグラム数が減るという事は、
コーヒー豆の価値が上がった≒100円の価値が下がった という事です。

過去からの推移をみてみると、1ドル360円の固定相場制から1973年に変動相場制へと移行後
経済の伸長と同期して名目レートで円高傾向にあった日本円は、2011年10月の最高値75円32銭以降
円安傾向へと変転しましたが、実質実効レートは6年遡った1995年をピークに下降している事が判ります。
これはバブルがはじけた直後から日本経済(物価や賃金)が停滞・下降している事を端的に表しており
その後の名目レートにおける円高は海外から過剰評価されていた、とも捉えられます。

多くの国が過去20年間で物価や賃金が成長するなか、日本の経済水準はほとんど変わらなかった結果、
実効為替の騰落率(上げ下げの率)は主要通貨において最下位と脆弱化しています。
労働力の安い海外産は安くて当然、といったこれまでの固定概念はもはや通用せず、
今後更なる経済力の低下が続く場合、消費財の多くを輸入に頼る日本国民の生活は厳しくなるでしょう。

この実質実効レートを回復するには、再度日本全体の経済活性化を実現せねばなりません。
消費を促す税制度の見直しや賃金を恒常的に上げていける施策の強化はもとより
食品原料の自給率向上による輸入頼りの現状打破など多くの改善内容が考えられます。
我らが日本政府のかじ取りに期待したいところです…

A.K

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